EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 8

「色で世界を繋いでいく、有線七宝」
ヒロミ・アート 室井麻依子さん(創業1970 年/ 京都市西京区)
実は眼鏡づくりでも使われている技法、七宝。ヒロミ・アートは七宝の様々な技法の中でも、金属の線を用いて模様の輪郭を形作る「有線七宝」でアクセサリーを中心に制作・販売をしている工房だ。
「有線七宝は、線で空間を仕切り、色で世界をつなげていくような工程が好き」だと言う室井さんにお話をお伺いしました。
七宝について
ツタンカーメンのマスクが七宝の最古
七宝の技法が使われているもので一番古かろうと言われているのが、ツタンカーメンの黄金のマスクなんですよ。七宝の技術は立体から、着飾るための装身具まで、大きさと形を変え、使われるようになっていきます。「有線七宝」も外国からの技術なんですけど、日本にきてから、日本の職人技が際立つ、より緻密な「有線七宝」となっていきます。「有線七宝」の工程は、土台の金属を必要な形に切り出して、その上に金属線で模様の輪郭を形作って、迷路の壁のように立ち上げていく。色が混ざらないように釉薬をさしていって、模様を浮き立たせます。下地を焼く、線を焼く、研磨して焼く。焼く工程を何度も挟んで完成します。

ヒロミ・アートの七宝の特色
絵の具の延長
お客様からもよくいただくお声で「ヒロミアートさんの七宝はわかりやすい、それくらい色が違う」と言ってもらいます。七宝の技法や素材は全国共通です。その上で、色に特徴が出ているということは、強みかなと思います。私は昔から絵の具を使って絵を描くのがとにかく好きでした。色に関する研究も試行錯誤もずっと続けています。

継承について
七宝との出会いを増やす
私より下の世代で、七宝をやりたいという方にお会いすることがなかなかありません。七宝の最前線を走ってる方が60 代70 代の方なので、七宝を学べる場所、出会う場所が少ないんだと思います。私は大学で彫金を学んでいて、たまたま先生が教えてくれました。七宝を専門に学べる機会が少ないので、学生さんや若い世代の方にはワークショップの体験で「七宝を作る」ということを知ってもらって、職業の選択肢の一つにもなればと思っています。「七宝があるよ」っていうのを気づいてもらえるように活動していけたらいいなとは思います。
譲れないこと
やってみたら、できる
とりあえずやってみたらできちゃうこともたくさんあります。ただ、七宝の特徴的に、鉄やステンレスには焼き付かないので、特殊な手順が必要だったり不可能な話はありますけど、それなら七宝を焼き付けるんではなくて、ステンレスに七宝のパーツを貼り付けるという形で展開したりもします。何でもやってみたらできるんではないかと思っています。
伝統とは
技法を変えずに続けていく
金属線を立てて、金属線と金属線の間に色をを入れるというのが「有線七宝」という伝統技法。七宝づくりにおいて誰かがこの工程を踏み続ける限り、技法が途絶えることはないだろうし、ものも残っていく。形は装身具でもオブジェでもなんでもいいんですけれども、「有線七宝」をずっと気合い入れてやりたいですね。