EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 7

「菓子木型とだんじりの彫刻」
谷口彫刻工芸 谷口知彦さん(創業2018 年/ 京都市上京区)
和三盆や落雁など、つくる工程で必ず必要な「菓子木型」。日本中でも菓子木型を手がける職人はもう数名と言われている。菓子木型と同様、現在、眼鏡づくりでも特別な技術が高齢化によって失われつつある。幼い頃から手を動かしてつくることが好きだった谷口さんは神社仏閣やだんじりの彫刻を手がける傍ら、菓子木型を作る理由はそこが大きいと言う。谷口彫刻工芸の谷口さんに、菓子木型そして彫刻についてお話を伺いました。
菓子木型とは
京都の和菓子を支える道具
「菓子木型」とは、特に和菓子のお干菓子や上生菓子を成形するときに使う木型のことです。お菓子のデザインとは左右、凹凸を反対になるように彫って制作します。京都の和菓子屋さんに行くと、玄関の上に使わなくなった古い菓子木型が並んでいたりして、目にしたことがある人もいるかもしれませんね。京都の和菓子屋さんは今でも使ってくださっているところが多いと思いますね。

だんじりの彫刻から、菓子木型もつくる
僕はずっとだんじりの彫刻を彫る仕事をしてきました。菓子木型を初めて見たのは、京都の骨董市。当時は自分が菓子木型の職人になるっていうイメージはありませんでした。菓子木型を作って見ようと思ったきっかけは、兄弟子から「最近、和菓子屋さんの菓子木型を作ってる人が少ないらしい」と聞いたことです。お菓子屋さんに通ったり、他の県の菓子木型職人さんに教えてもらったりしながら、ほとんど独学で学びました。だんじりの彫刻をやってたからこそ、菓子木型にも技術を応用してつくることができたと思います。だんじりは自分が良いと思ったら良い作品になるけど、菓子木型の方は、実際にお干菓子が出来てみないと良いかどうかが分からないところが難しいです。菓子木型づくりには、色々な技術や工夫が込められていることを作ってみて、知ることがたくさんありました。

手仕事について
手作業にしか出せない味わい
今はたくさんデジタルの技術もあって、菓子木型も3D プリンターなどで簡単に作ることができると思います。でも手作業の良さは残していきたいですね。例えば、手で作ると、全く同じ絵柄が並んでいるように見えて、実はちょっとずつ違っていたりします。この辺が手作業にしか出せない表情かなと思います。
伝統とは
自分が関わっているという実感はあまり無い
自分がやっていることに関しては、大切に思う感覚はあまり無いかもしれないですね。ただ、他の人がやっていることに関してはすごくリスペクトがあります。伝統工芸自体は僕も大好きで、見てて良いなと思うんだけど、自分自身がそういうものに関わっている実感が正直あまりないんです。自分が好きで就いた職業だったからかな。
継承について
技術は残していきたい
昔は京都にも菓子木型職人さんがたくさんいたんですけど、今は僕の他にはいないみたいで、全国でも数人しかいないらしいです。菓子木型を作る人が全国で僕しかいなくなってしまったら、技術をなくしてしまうのは嫌だなと思います。だから時が来たら、僕の彫刻仲間に教えることもあるかもしれないです。彫刻をやっている知り合いだったら、できるんじゃないかと思います。
譲れないこととは
自分の満足のいくものづくり
職人って芸術家とは別で、ある程度モノに金額が決まっていて、それに合った仕事をする人だと僕は思うんですけど、金額が安いからと言って自分が納得できないものを作りたくはないと思います。いくらやからこの程度で、とは思いたくはない。ある程度は自分の満足のいくものを作るようには心がけています。