EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 15

「生活にマッチした桐箱づくり」
箱藤商店 5 代目 山田隆一さん(創業1891 年/ 京都市下京区)
美しい絵が描かれた桐箱が並ぶ箱藤商店。初代は桐の産地である広島から京都に出てきて、創業から130 年。5 代目の山田さんは「もう一手間加える」という言葉をモットーに、一部の用途だけで使う伝統工芸品ではなく、あらゆる人の生活にマッチする桐箱を作られている。箱藤商店の桐箱について、山田さんにお話を伺いました。
桐箱について
桐は息をする
桐箱は中の湿度を一定に保つことができることが特徴。平安時代から聖徳太子の衣服を保管するために使われていたようです。その時は桐箱を作る職人がいなかったから、大工さんが作っていました。需要が増えたのは江戸時代くらいからですかね。湿度の高い日には湿気を含んで膨らみ、中に湿気を入れず、乾燥する日は、収縮して通気性を良くする。そんな桐箱は四季のある日本で重宝されてきました。
新しい取り組み
一般使いされる桐箱をつくりたい
昔は京都の鴨川より西側だけでも桐箱を作っているところは数十軒あったのが、今はほとんどなくなっています。同じものを作り続けているだけじゃ残り続けることはできない。絵師さんも同じものを描き続けるだけじゃ楽しくないでしょ。
ずいぶん前に一味入れを桐箱で作ったんですよ。実際に自分で使いながら実験してみたんですけど、食品とかって水分を含んでいるものが多くて、汚れが目立っちゃうんです。最終的には楊枝入れとか印鑑入れにしました。やっぱり眼鏡とか宝石、貴金属のほうが桐箱には合ってるんですよ。小物入れとかを考えて商品として出してみると、お客さんから「蓋を開けなくていいものやったら、ピアス置けるようなものになる」とか「蓋を片手で取れへんのか」とか言われて、新しい構造を考えます。そうやって、桐箱の使い道も増えるし、箱の形のバリエーションも増えてきました。


譲れないことは
考えるな、行動しろ
譲れないことは、とにかく頭で考えすぎず、手を動かす。映画の『トップガン』にありましたよね。「Don’ t think, just do」「考えるな、行動しろ」ってことです。

継承について
チャレンジの先に、続いていく
いろんなお客さんの声を聞いて、改善したりチャレンジし続けていく。継承というのは、100 年先を考えるというよりかは、今が続いていく、くらいのイメージだと私は思っています。
伝統とは
もう一手間を惜しまない
初代や先代が作ってきた桐箱しか知らないですけど、伝統とは、その教えを守りながら新しいものにチャレンジしていくことだと思っています。「ここまでしたんやし」ってそこで納得しないことを意識しながら作っています。妥協せずにね。