EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 14

「自然の力を借りて、自然と共に紙を漉く」
黒谷和紙協同組合 理事長 林伸次さん・専務理事 山城睦子さん(京都府綾部市)
京都市から北に車で1時間半、自然が残る山深い土地、そこを流れる清流・黒谷川の谷間の里で、黒谷和紙は800 年以上つくられてきた。冬の寒さが厳しく、農業には不向き。しかし紙づくりには適した風土だった。それは鯖江で眼鏡づくりが発展した理由にも似たところがあった。
黒谷和紙協同組合の紙漉き職人でもある林さんと山城さんに、黒谷和紙についてお話を伺いました。
黒谷和紙について
何百年経っても残る和紙
黒谷和紙は良質な楮(こうぞ)の木を原材料にしています。紙を漉くときに必要なねり材はとろろあおいの根っこから抽出したもの。材料全てが自然の素材です。そして、一枚一枚、職人が手で漉いています。そのため丈夫で強く、長持ち。この特徴から、長い間、提灯や和傘、障子、京の都から近いという事もあり、呉服に関わる紙として黒谷和紙は使われてきました。黒谷和紙は、何百年経っても、残る和紙なんですよ。

紙と職人
すべての工程をひとりの職人で
昔は、黒谷に住む集落のほとんど人が黒谷和紙に関わる仕事をしていました。でも今、黒谷和紙を作っている職人のほとんどは、実は他の地域、県からの移住者なんです。黒谷和紙が好きな人間が集まっている町なんですよ。そして、少し変わっているかもしれないことがもう一つ。昔の黒谷の紙漉きは家族の中でそれぞれの役割を持ち、一家総出で作られる家内工業でした。でもそれができなくなった今、原料の処理から加工、紙漉きから乾燥まで、工程は多く細かいのですが、黒谷の職人は最初から最後まで紙づくりの作業を一人で行うという作り方をしています。

継承について
技術だけでなく、紙への想いも継いでいく
黒谷に住んでいて、家業だから継いだんじゃなくて、わざわざ遠くから来て、紙漉きをやってくださってる方って、やりたい気持ちを持って来られてる方たちなので、気持ちの上ではすごい強いと思います。その強い気持ちで、継承されているってことは、黒谷にとってはすごくありがたい事だと思います。
伝統とは
昔は当たり前だった仕事が、今は当たり前ではない
昔の職人さんたちが当たり前にやっていた仕事が、今の世の中では、当たり前じゃ無くなっている。だけども、そのままの方法で、それを未来に残していこうっていうのが伝統だと思いますね。そして根底に流れるものは変わらないけれども、良さを生かしつつ、世の中にあったものを作っていくことが伝統を続けていく上で大切だと思います。
譲れないこととは
紙を作るのが好きだから、手漉きを続ける
譲れないことは、ずっと手漉きを守り続けていく、ということですかね。なぜかというと、僕たちは紙を作るという行為が好きなんですよ。何で紙を作るのかと聞かれたら、作るのが好きだから。それがたまたま使ってもらえる人がいて、お商売として出来ている。どこか端折って儲かればいいという価値観にはならないですね。工程そのものが譲れないんです。材料の楮づくりから、自然の力を借りて、自然と共に、これからも和紙を作り続けたいと思っています。