EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 13

「うちくらいは、最後まで型染を続けていく」
丸染工 横田武裕さん(創業1965 年/ 京都市右京区)
丸染工は京友禅の技法の一つである「型染」を創業当時から変わらない製法で行っている工房だ。振袖から留袖、男性用着物も染めている型染の工房は現在、京都でも残り少ない。また、丸染工という社名の「丸」は働く皆が丸く一つの輪になって働きたいと先々代が付けた。そんな丸染工の横田さんに、「型友禅」とその魅力についてお話を伺いました。
型友禅について
型ごとに色を重ねていく“型友禅”
京友禅の中でも、型を用いることで、同じ柄の染めを量産できるようにしたのが“型友禅” になります。色ごとに型が分かれており、色を重ねていく事で模様が出来上がります。1枚の着物に最大で30 色くらい使っています。型友禅ができたのが今から130 ~ 140 年くらい前なんですけど、作業の仕方はこれまで、ほとんど変わっていません。どこの染屋さんも色は自分たちで作っていて、板場の横に、絵の具場と呼ばれる色を調合する場所があります。同じような色に見えても、染屋さんによって微妙に違います。そこが染屋の個性にもなっています。

振袖の柄について
振袖は物語をつくれる
振袖は、未婚の女性の第一礼装になるくらいの晴れ着なので、縁起の良いものを柄に入れることが多く、実はあまり季節感は無いんですよね。桜も紅葉も菊も一つの振袖に描かれている。いろんな季節が同居しているんです。
以前いただいたお仕事で、「和楽器のオーケストラの柄にしてほしい」という注文がありました。琴や笛や太鼓など、和楽器の柄をたくさん組み合わせて、和のオーケストラの世界観を作り上げるんです。そんな風に、一枚の振袖に物語や世界観が自在に表現できるときは楽しいし、腕の見せ所です。
継承について
簡単に消えてしまうからこそ
型友禅は、なくすにはもったいない技術だと思います。その一方で、作業する上でどうしても大きな作業場が必要だったり、体力が必要なので、ほっといたら簡単に技術が無くなってしまうような工芸なんです。だから良いものだと再認識してもらいたいし、知らない人にもこれから知ってもらいたい。探り探りですけど、これから見つけていきたいですね。
譲れないこととは
受け継がれる型
譲れないことは、今後もずっと、型友禅でやっていくこと、型友禅を残していくことです。どんどん周りがインクジェットによる染めに変えていく中で、うちくらいは最後まで「型」にこだわっていきたい。廃業する染め屋から、型を引き取って染める着物もあります。型を受け継がせていただくことによって、型友禅を残していくことにつながるのではないかと思っています。

伝統とは
時代に合わせて、形を変えて
“京友禅” と一口に言っても、そのデザインは時代に合わせて移り変わってきているんです。例えば100年前のものと今のものでは、全く違ったデザインをしています。京友禅は時代に合わせてバージョンアップしてきた工芸なんですよ。今は“京友禅” というブランド自体が伝統になりつつあるので、その名前を残すために形を変えつつ、受け継いでいきたいです。